こんにちは、WPホームページ研究所の運営サポートチーム(@WP_LABO)です。
本日はレンタルサーバーのマイグレーションに関する解説です。多くの方がメールボックスに届いたまま「?」となっている可能性も高いのでIT技術者として解説させていただきます。ぜひお目通しくださいませ。
目次
1月中旬にMixhostからレンタルサーバー契約中の利用ユーザーへメール配信された「新サーバーへのマイグレーション」とは何か?
2020年1月にミックスホストから利用ユーザーへマイグレーションのお知らせが届きました。新サーバーのマイグレーションとは一体何なのか?本記事では技術的な説明を行います。
マイグレーションとは?
マイグレーションは「システム(サーバープラットフォーム)の移行」を指します。ざっくりと言えば「現在あなたのウェブサイトが格納されているサーバーをアップグレードするので便乗しませんか?」といった内容。
そもそもレンタルサーバー業者は「第三者へウェブサイトを運営するためのサーバー領域をレンタルする」のが主な業務内容です。つまり、より快適で高速な通信ができる環境を整えていくのが日常業務としての最優先事項です。人によっては「そっとバージョンアップしといてくれたらいいのに!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、サーバーというものは多くの人と共有で使っているスペースなのでそういうわけにもいきません。
レンタルサーバーは「賃貸マンション」によく似ています。
基本的には毎月の費用を払って“ホームページ”という人(データ)を住まわせてもらっているような状況です。賃貸マンションでは駐車場を借りて車を乗っている人がいたり、駐輪場のみを使う自転車の人もいたり、普通に住んでいるだけの人、お店を出している人など各住人によって使い方は千差万別ですよね。
これらをレンタルサーバーで言い直すと、ある人はワードプレスをインストールしていたり、ある人はソーシャルネットワークを運営していたり、技術がある方は特殊な環境に設定しなおしてメルマガ配信ソフトをサーバー上で動かすなど、多くの猛者がいるのがレンタルサーバーの中身です。
さらにもっと腕があればPHP(プログラミング)とDB(データベース)を駆使して検索エンジン上にある莫大な情報を自動で収集するBot的なオートメーションツールを動かしている方もいたりします。
何が言いたいのかはお察しの通りですが「色々な種類の利用ユーザーがいて、色々な使い方をされているのがレンタルサーバーの実態」となります。そんな状況で承諾もなしに勝手にアップグレードするのは絶対に不可能なわけです。マンションで言えば、共有部分だけでなく部屋の広さから形までもすべてが変わります。
今まではちょうど良い収まりをしていたデスク周りに隙間が出るかもしれませんし、場合によっては全部屋で玄関に本棚が作られて、自前で用意した本棚を使う必要さえもなくなってしまう可能性も出てきますよね。
そのためレンタルサーバーでは影響が出そうな状況では、ユーザーに事前通知をして、マイグレーションに申し込むか否かを選択してもらっているわけです。上記は全体の概要を掴んでいただくためのたとえです。
マイグレーションの対象となっているサーバー
今回は「jp1〜15.mixhost.jp」と「us1.mixhost.jp」が対象サーバーとなっています。実は昔、Mixhostではエコノミーと呼ばれる月額480円の格安プランが存在していました。まだMixhostが出たばかりの頃だったのでスペックを抑えつつ目玉商品として集客用に打ち出していたのが『エコノミープラン』です。
時代と共に「スペックの向上」を求められるのもレンタルサーバーの定め。サーバーと言っても裏側で動いているのは『サーバー運用に特化したパソコン』なので毎年スペックが上がっていくパソコン業界と同じ流れで日常的にスペックは上昇していきます。ちなみにエコノミープランの詳細は以下となります。
▼エコノミー(旧)
・ディスク容量:SSD 10GB
・CPU:1vCPU
・メモリ:512MB
・転送量目安:30GB/日
そして今回のマイグレーション後に与えられるスペックが以下となります。
▼エコノミー(マイグレーション後)
・ディスク容量:SSD 50GB
・CPU:2vCPUs
・メモリ:2GB
・転送量目安:1TB/月
ディスク容量(保存領域)が5倍で、CPU(頭の賢さ)が2倍、メモリ(処理スペース)が4倍となっています。エコノミープラン以外のスタンダード、プレミアム、ビジネス、ビジネスプラスもほぼ同等のアップとなっています。各プラン毎の変更内容を参考として以下に書き出しておきます。
エコノミー | スタンダード | プレミアム | ビジネス | ビジネスプラス | |
ディスク容量 | SSD 10GB ↓ SSD 50GB |
SSD 30GB ↓ SSD 150GB |
SSD 48GB ↓ SSD 250GB |
SSD 72GB ↓ SSD 300GB |
SSD 96GB ↓ SSD 400GB |
CPU | 1vCPU ↓ 2vCPUs |
2vCPUs ↓ 3vCPUs |
3vCPUs ↓ 5vCPUs |
4vCPUs ↓ 8vCPUs |
5vCPUs ↓ 10vCPUs |
メモリ | 512MB ↓ 2GB |
1GB ↓ 4GB |
2GB ↓ 8GB |
4GB ↓ 12GB |
6GB ↓ 16GB |
転送量目安 | 30GB/日 ↓ 1TB/月 |
60GB/日 ↓ 2TB/月 |
90GB/日 ↓ 4TB/月 |
120GB/日 ↓ 6TB/月 |
150GB/日 ↓ 7TB/月 |
各プラン毎の上がり幅(比率)を細かく見ると「エコノミー」がもっともグレードアップしています。ワードプレスを運営するならメモリは1GBあればベストという参考値もあるので今回のマイグレーションでエコノミープランが『メモリ2GB』になるのはとてもありがたい進化となっています。
現行プランとの仕様の違い
エコノミープランなど過去に契約したユーザーはドメイン毎でPHPのバージョンが切り替えられません。最近契約した現行プランのユーザーであれば設定したドメイン毎でPHPバージョンを変更できるのでより柔軟なサイト運用が可能です。example.comはPHP5、example.netはPHP7などドメイン単位で設定が可能となります。
しかし、今回のマイグレーション後でもPHPバージョンのコントロールは1アカウント1バージョンのままのようです。ドメイン毎でPHPバージョンを切り替えられるのが便利なのかどうかは使い方にもよってきますが、アフィリエイトを複数サイトで運営するなど、状況によってはワードプレス以外のシステムを導入するシチュエーションもありますので本来は切り替えられるに越したことはありません。
なお、影響範囲を考慮してPHPバージョンをドメイン毎で切り替えられる機能は付かないとの補足がありましたが、技術的には現在運用している1つのPHPバージョンを維持したまま差し替えれば良いだけなのでMixhostのサーバー技術者であれば問題はないはずです。とはいえ影響範囲が広いのは事実なのでウン万と運営しているウェブサイトの動作不具合などリスク面を考えると仕方はなさそうです。近い将来に期待しておきましょう。
また現行プランではphp.iniの編集を許可していますが、従来のプランを契約している旧ユーザーは現状維持となります。なお、php.iniは基本的に.htaccess側でも一部機能をコントロールできますのでその範囲で調整してくださいとの補足もありました。併せて「jp1〜4.mixhost.jp」はアプリ自動インストール機能がなくなります。
正しくはSoftaculousへ移行されるので各種アプリケーションの自動インストール機能は残ります。ただ「jp1、jp2、jp4、us1サーバー」の該当ユーザーだけに用意されていた簡単インストール画面が消えるという話です。画面が変わってもコントロールパネル(Cpanel)上から自動インストール機能は使えるので影響はなし。
マイグレーションの注意点
上記で触れた通り「スペックが上がって良いこと尽くめ」ですが、多少のデメリットもあります。それはマイグレーションによるトラブルの保証ができないという点です。
免責事項について
今回のマイグレーションに申し込んだ後、裏側で動作するサーバー環境を入れ替えた後に発生したエラーは保証外となります。ハード側のスペックが上がるだけでトラブルが起こるのはあり得ませんが今回はDB(データベース)のバージョンが10.2に変更されるので影響する可能性はあります。
現在のIPアドレスについて
マイグレーションの実行後は契約サーバーのIPアドレス(240.11.3.16等)が変更されます。ただし、ネームサーバーに「ns1〜ns5.mixhost.jp」が振り分けられているサーバーを利用中ならIPアドレスはマイグレーション後も変わらないとのことです。IPアドレスが変わってもあまり影響はありません。
ちなみにIPアドレスが変わって困るパターンとしては、外部アプリケーションのアクセス制限でIPアドレスを指定していたり、ウェブサイトのIPアドレスを何かしらシステム側から制御をかけている場合などですね。Hostsの設定時も値が変わりますので使用時はダッシュボードで確認すればOKです。
各種機能について
マイグレーション後以降は「Ruby & Python」のバージョン選択機能が廃止されます。Ruby & Pythonの動作はサポート対象外です。もし積極的に使っている言語なのであればマイグレーションに申し込まない方が柔軟な運営が可能です。Python(パイソン)はGoogleが提供しているAIツール関連で使われている言語となります。
メールサーバー、FTPサーバーへのソフトからの接続について
マイグレーション後のサーバーではセキュリティ上、メールサーバー、FTPサーバーはTLSv1.2のみの対応となります。ご利用中のメールソフト(Windows Live Mail等)やFTP接続ソフトが古い場合はSSL/TLSを用いての接続ができなくなりますのでメーラー側やFTPクライアント側の更新が必要となります。もし更新ができない場合はSSL/TLSを使用せずに接続する設定に変更する必要があります(Mixhostとしては非推奨)。
コンテンツについて
マイグレーションの作業中は運営しているサイトに影響が出ないようアップロード済みのファイルや各種データへのアクセスを制限されます。作業完了後は以前と同じ状態で表示可能となります。作業中は旧サーバーと新サーバーが切り替わるためデータに違いが生まれてしまいデータが正しく引き継げない可能性が出てくるのでコンテンツの編集作業は控える必要があります。
プログラム等の動作について
データベースのバージョンが上がるのでDBを使用しているアプリケーション(ワードプレスなど)がある場合はバージョンによってはプログラムを正しく動作させられなくなる場合もあります。バグが出てしまったら修正作業を行なう必要が出てきます。基本的にはMariaDBのバージョンが10.2へ変更されても整合性は維持されているので影響はなさそうですが、どうしてもプログラム側の仕様に依存してしまうので断定はできません。
また、ホームディレクトリが「/home2/username(または/home3/username)」に該当する人はマイグレーション後に「/home/username」に変更されます。もしホームディレクトリのパスをプログラム内で管理していたりと影響のあるロジックを書いている場合は少なからず影響するでしょう。一般的にはアプリケーション内でホームディレクトリのパスが影響する仕様は少ないですが新米エンジニアの書いたプログラムは注意が必要です。
新サーバーの特徴
マイグレーション後の新サーバー体制では、今利用しているサーバーと比較して下記の特徴があります。一部の仕様上の制約(PHPバージョンは1アカウント毎で1バージョンとなる点&php.iniの編集は.htaccess内で行う点)を除き、現行プランのサーバーとほぼ同一仕様となっています。
QUIC対応
これまでも日本初のHTTP/2が好評でしたが、QUICに対応してHTTP/2以上の表示速度の向上を実現しました。
ストレージ容量の増強
保存ディスク容量が50GB(エコノミー)〜 400GB(ビジネスプラス)となり、従来よりも大容量のSSDストレージを使えるようになっています。
サーバー回線速度の増速
サーバー回線速度を10Gbpsまで増強。夜間や日中の混雑時などアクセス集中時もより快適で高速な環境をご利用いただけます。過去に回線速度が原因だった重さはサーバー回線の増強によって改善する可能性があります。
ホストサーバースペックの向上
32コア64スレッドの圧倒的なハイスペックのCPU(頭の良さ)を搭載し、最大256GBのメモリ(処理スペースの広さ)、さらにSSD RAID10を組んだ高機能サーバー環境を導入しています。最新パソコンは電源の立ち上げやアプリケーション起動の速度が早いのと同じでより快適になります。
安定性の改善
より高品質なサーバーハードウェアの導入や大容量回線、DDoS攻撃に対する対策を実施してセキュリティ性や安定性が従来よりも改善いたしました。
サーバー設置場所の変更
サーバーの設置場所を北海道から東京都内のデータセンターに変更して首都圏に近くなりました。物理的な距離が近い分表示速度の向上が見込めます。
最後に
マイグレーションは『移行作業』です。「Mixhost」はレンタルサーバー業者なのでサーバーシステムのバージョンアップとなります。すでにあらゆる言語のツールを動かしている状況であればマイグレーションには申し込まずそのまま様子を見る方が安全です。
しかしながら、ディスク容量が10GBから50GBになれば物理的にアップロード可能な領域が5倍になりますし、さらにCPUが2倍、メモリが4倍に進化すればワードプレスが以前よりも快適に動作するようになります。スペックが上がれば余裕も出てサイトが高速化される点は大きなメリットです。
ただその反面で少し変わった使い方をしている方であればエラーが発生する可能性も出てきます。サーバー運営会社としてもコストが膨らむ古いサーバー機材をそのまま残しておくよりも新しい環境へアップデートして、さらに満足度をあげて解約数が増えるのを避けたいという狙いも当然ある訳です。
どういったシステムがサーバー内で動いているのかわからない場合は近くの詳しいサーバーエンジニアに中身を覗いてもらうのも1つです。また、ワードプレスで複数のウェブサイトを運用されているのであればいつでも復旧できるようにあらかじめWPでバックアップを作成しておくのも解決策です。
実際にマイグレーションへ申し込むかどうかは公式サイトの情報やその他多くのサイトでも情報発信されていますので積極的に収集していきましょう。
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